『ODA 日本に何ができるか』 [書籍:『』「」付記]
この本はタイトル通り、ODAについて書いてます。構成としては、日本のODAの現状・批判、比較して米国・世銀のODA政策、グローバル化で変容する世界経済とODA、ODA批判分析、東アジアとODA、日本のなすべきこと、といったことがまとめられています。筆者の一人である渡辺さんは外務省でODA改革懇談会の座長を経験されていた方で、その人が「個人」の立場で書いたものということです。
実際の内容ですが、日本のODA関連で、論点をほとんどさらってあり、かつしっかりと書かれている本ではないかな、と思います。巷で、述べられるような安易なODA論と異なり、感情論・精神論に陥ることなく、合理的な議論がされていて、読んでる僕としても、納得して読むことができました。
この本の最後に筆者の結論が書かれています。それによると、
「われわれが着目した最大の論点は、ODAの「触媒効果」である。一国の発展の原動力民間企業にある。ODAがソフトインフラ整備を通じて民間活力を誘い出す触媒とならねばならない。ソフトインフラとは、市場メカニズムを少しでも有効に機能させるための制度的な環境条件の整備であり、そのための「知的支援」において日本はODA世界のリーダーたるべきだ。これが本書の主張のポイントである」
主張のポイントって言ってるんだからわかりやすいですね。
少し補足すると、貧困の削減と経済発展は不可分の関係にある。そして政府と市場の関係とはどちらかが優位になるのではなく、相互補完的なものである。そこでは、国家は自ら市場のプレイヤーとなるのではなく、民間企業が活動を活発に行うための制度の構築を果たす必要がある。そして、政府の制度と能力の構築のためのソフトインフラの設計こそODAが現在最も果たすべき役割である。、ということみたいです。
そしてこのことを言うために、上で述べたような構成の下、米国・世銀の例、東アジアの成功、日本のODAの評価、ODA改革等の話を用いながら具体的な話が述べられています。はっきり書いてないですが、日本の貧困削減とともに経済成長を重視するODAを貧困削減のみを主たる目的とする世銀・米国などの援助よりも高く評価していると思います(その最たる証左として、日本が主にODAを拠出した東アジアだけが貧困からの脱出を果たしていることを挙げています)。
文庫で廉価なこともありますし、ODAを簡単に勉強しようと思う人には、お勧めできる一冊です。この本でも述べられてましたが、これからの時代日本がODAを供与していくには国民の理解が必要であると思います。しかし、実際問題、ODAで何をやっているのかというのは、あまり身近な問題としてみることができないと思いますし、何をやってるのかわかりにくいと思います。この本の判断はともかく、こういう本で一人でもODAに関する議論について知ってもらえれば、それ自体いいことなのだと思います(って、なんか関係者みたいなコメントですね。)。
感想舞台裏
ところで、この本については各章ごとに簡単にまとめてたものを紹介しようとしたんですが、約三時間かけて作って完成した瞬間、
データが飛んでしまいました(泣)。
どうも、長時間Blogの管理ページで更新しないでいると、別の管理ページに行くときに再びpasswordが必要みたいです。本のまとめを載せようとしたら、いきなりpasswordを再び、というページに飛ばされ、気がついたら、今まで編集していた本のまとめがなくなってました。もし、知らなかった人がいたら、長時間の書き込みをするときには是非気をつけてください。
というわけで、普通の感想形式になってます。
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