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ピノチェト事件 [国際法・国際関係]

さて、今回はこんなニュースを。

ピノチェト元大統領が死去=軍政16年半、人権弾圧を主導-チリ

 【サンパウロ10日時事】南米チリで16年半にわたり軍政を率い、晩年は在任中の左翼活動家に対する人権弾圧事件などへの刑事責任を問われたアウグスト・ピノチェト元大統領が10日、心不全のため首都サンティアゴの陸軍病院で死去した。91歳だった。3日に心臓発作を起こして入院、バイパス手術を受けていた。
 葬儀は国葬ではなく、軍葬の形で12日に行われる。
 ピノチェト氏は殺人などの罪で起訴されたが、死去により、「国家元首の犯罪」が十分解明されないまま、裁判は幕引きとなる。 

(時事通信) - 12月11日9時0分更新

 

世間ではどうか知りませんが、国際法の世界では有名人なピノチェト。

復習のため、ピノチェト裁判を振り返りたいと思います。

事件は元地理の大統領であったピノチェトが病気療養のためにイギリスに滞在していたところ、スペインの国際逮捕状に基づきイギリス当局に仮拘禁されたというものです。そこでスペインに引き渡すことの審査が行われます。

1998年10月28日、高等法院では仮拘禁令状の取り消しが命じられます。根拠は国家元首に対する刑事管轄権からの特権免除です。

1999年3月24日、貴族院は仮拘禁を適法とする判断を下します。理由は以下の通り、


①双方可罰

国際法上、他国等で犯罪をおかし自国内に滞在する者を他国からの請求に応じて訴追・処罰のために引き渡すことは一定の犯罪を除き、国家の義務とはされていない。各国は犯罪人引渡条約や請求国との相互主義が保たれることを条件とした国内法、あるいは国際令嬢によって引渡しを行うが、その際、引渡対象となる犯罪は、一般に重大犯罪に限定され、また、請求国・被請求国双方の刑法において犯罪とされているものに限られるのが通例である。[双方可罰(double criminality)の原則]

判決では、引渡請求時ではなく、犯罪発生時の可罰性を問題とし、

・スペインで実行され、属地主義に基づいて引渡が請求された拷問や殺人の共同謀議については、英国刑法上も処罰可能のであるため、双罰性の要件を満たすことを認めます。

また、

・チリで実行され、普遍的管轄権に基づいて引渡請求が行われた拷問行為またはその共同謀議については、英国法上も当該犯罪に対する裁判管轄権が設定されている必要があるところ、

英国が域外拷問行為に対して普遍的管轄権を設定したのは1988年9月29日以降(イギリスで拷問等禁止条約を国内法化した刑事裁判法第134条が施行された日)であり、英国が拷問禁止条約の批准を行ったのは12月8日、チリが10月30日であることから、

1999年12月8日以降行われた行為に限定して、双罰性の要件が満たされることを認めます。

 

②特権免除

 国際法上、現職の国家元首は、国家の威厳を代表するため又は国家任務の遂行を妨げられないため、公的な行為か私的な行為かに拘わらずあらゆる行為につき完全な人的免除(immunity ratione personae)が与えられる。これに対し、任務を終了した「元」国家元首は人的免除を失うが、元首在任中の公的行為については、外国国家の活動の一体性(integrity)を保護するための事項的免除(immunity ratione materiae)を享受する。

判決は元首は在任中は完全なる免除を享有するとする一方で、元元首については、外交使節の元大使同様、在職中任務遂行のために行った行為についてのみ免除を享有するとしています。

そして貴族院は、拷問行為は元首の任務遂行のため行われた行為ではないとして、ピノチェトの免除の享有を認めませんでした。

その根拠はなかなか難しいところなのですが、

拷問等禁止条約の規定の構造、特に同条約が国家元首を含む公的資格で行動する者によって行われる拷問のみを国際犯罪として禁止した点、及び、同条約が引き渡しか訴追の義務aut dedere aut judicare) に基づき

そうした地位にある者に対する外国裁判所の普遍的管轄権を認めている点から考えて

当該条約の独特の構造が元国家元首の事項的免除の承認と相容れないことに求められているような気がします

 


その後結局ピノチェトは病気のため裁判に耐えられないということで、チリに帰国することになります。それでこの度無くなったということです。

拷問などの国際犯罪ならば、元首の公の行為ではない、というのは情において理解しますが、法的に妥当なのかは、もうちょっと勉強しないと分かりません。個人的には、国際的な刑事裁判所とかならともかく、やはり他国の国内裁判所で免除を享有させないのはやはり問題なのかな、という気がします(若干、法的な主張ではない気がしますが)。

国際法が個人を裁くようになった時代、その先駆的な事件として、今後も検討材料となる事件なのでしょう。


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