SSブログ

民主主義国は戦争しない? [国際法・国際関係]

近年少しはやっている議論です。授業で話が出ていたので復習もかねて考えて見ます。

民主主義国が戦争しない、なんてことを言う人は恐らくいないでしょう。近年の事例を見ても米国がイラク戦争を引き起こしたことを考えれば、分かることです。

では民主主義国同士は戦争をしないのでしょうか?

かつてそのようなことは無かったのではないか、ということが経験則として主張されることがあります。

本当でしょうか?

第二次世界大戦はどうでしょう?遥か昔には米英戦争も行われています。そもそも何をもって民主主義国というのでしょうか?イランは民主主義国でしょうか?シンガポールは?戦前の日本は?

民主主義国といっても色々な定義があって、なかなか難しそうです。そもそも民主主義国といっても自国の守るための戦争は許容されます。むしろ義務と言ってもいいくらいです。国民のための政治体制は国民を守らなくてはいけないのです。

特に民主主義国が成立した当初というのは極めて熱狂的な要素を含んでいます。ときとして攻撃的すらあるかもしれません。民主主義、という以上国民の意見にとって対外政策が影響されるのであり、熱狂的な国民の意見が戦争に向かわない、ということは難しいかもしれません。

では成熟した民主主義国同士は戦争しないのか?

何をもって成熟した民主主義国というのかは難しいですが、現在の欧州、北米、日本がこれに当たると言っても良いと思います。

たしかに戦争は行われていませんし、戦争は行われそうにありません。

しかしこれは一部の地域にのみ成立してるにすぎず、多くの国がこうした状況にあると言えません。

そして西欧などで戦争が起こっていないのはお互いが民主主義国だからである、ということによるものなのでしょうか?

こうした国は同時に経済が豊かであります、貿易によって経済的利益が結びついています、自国を守る一定程度の軍隊を持っています、制度的な信頼醸成装置が存在しています、そして過去の対戦の記憶があります。

安定した民主主義国の事実上の条件として経済が豊かであることを加えることができるのかもしれませんが、一応別の要因であることすれば、欧州で戦争が行われていないのは、民主主義国であるからかどうかは必ずしも分かりません。

しかし、だからと言って欧州で戦争が行われていないことは民主主義以外の原因による、と判断することはできません。科学的に証明されていはいませんが、すくなくとも成熟した民主主義国は戦争をしない、というのはかなりの程度当てはまるのでしょう。

では世界に民主主義は広がるべき、あるいは広めるべきなのか?成熟した国がいまだ欧州、北米、日本くらいに限られている、ということを考えれば、成熟した民主主義国同士が戦争しないという命題を突き詰める以上に、こうした議論が重要になってきます。

現在民主主義国は増大しています。これから成熟に向かっていくのでしょう。その意味で先の命題はこれからどうなるか、ということを見ていくことが必要になるのでしょう。

そして仮に先の命題が正しいにしても、民主主義国が広がるべき、あるいは広めるべきなのか、ということは別問題です。2つの意味があります。

1つ目。先も書いたように、民主主義国の誕生はその国内、国外に大きな変化を及ぼし、それ自体大きな不安定要因となります。

イランは民主化の初期の段階にあると思いますが、それゆえに国内のイスラム原理主義的な動きがより直裁的に体外政策に影響与えているのではないか、とも考えられます。パレスチナのハマスも選挙によって選ばれました。

下手に、特に下手な時期に民主化されるよりは権威主義的な体制のほうが良いのかもしれません。独裁的な権威主義者のほうが国際関係においては安定化要因になりえることもあるでしょう。パキスタンのムシャラフ大統領はそうした例の一つと言えるかもしれません。

2つ目。命題が成り立つとすれば、非民主的な国家はその政治体制自体が問題なのであり、民主主義国を作るために積極的な行動を民主主義国は非民主義国に対して行うべきである、という意見が出てくるかもしれません。よもすれば武力介入でもするべきである、それが自国の安全保障にもつながる、という意見もありえるでしょう。

しかし、多くの場合、外からの支援・介入によって作られた政府はその正統性の無さゆえに、脆弱であり、不安定になります。かれらは外からの支援によって作られた以上、国民に対して責任を負わなくても良いからです。彼らは支援をした団体、多くの場合国家ですが、の力によって成り立っており、それに配慮する必要はあっても、国民が自らの力の源泉で無い以上、国民を少なくともある程度は無視できます。

ここにはジレンマがあるのかもしれません。何故ならば、そうすると国民が自ら立ち上がるのが必要のなのですが、独裁政権の下で国民が立ち上がるのはかなり難しいからです。


とあまり救いのようの無いになってきた気がしますが、どうでしょうか。

ところで多くの人はこのことを見て、米国を想像されたように思います。

しかし日本も他人事ではありえません。日本と北朝鮮、日本と韓国、日本と中国、日本とASEAN、の間においても成り立ちうる話は多いように思います。

日本の周辺環境を考えるときも、力の均衡か、民主主義による平和か、それとも他の手段か、これは考えていく必要があるのでしょう。

ということでおしまい。

やばい、こういうこと書いてる場合じゃないのに…。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。