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第一章 核兵器の削減 [軍縮・不拡散問題入門]

軍縮問題入門

軍縮問題入門

  • 作者: 黒沢 満
  • 出版社/メーカー: 東信堂
  • 発売日: 2005/10
  • メディア: 単行本

 

第一章 核兵器の削減

第一節 核兵器削減の意義。

核兵器は冷戦中の開発競争が激化し、今日では全人類を何度も殺戮できるオーバーキルの状況が継続している。現在米ソ交渉等の進展が進み、核兵器は減少しているけれども、未だ核兵器は多い。

 

第二節 戦略兵器制限(SALT)条約。

対弾道ミサイル(ABM)条約。戦略兵器のうち最初に問題となったのは防御のための兵器である。第二撃にたいしての防御を脆弱にすることで第一撃の動機を減少させるという相互確証破壊MADが採用された。

1972年対弾道ミサイル条約ABM条約は対弾道ミサイルシステムの展開を一般的に禁止している。74年にABM条約議定書が締結されている。尚、条約の検証については偵察衛星など自国の検証技術手段を自由に使用することが規定されている。

しかし、21世紀に入って成立したブッシュ政権はミサイル防衛の必要性を強調し、2001年にABM条約から脱退声明を発表している。

SALTI暫定協定。ABM条約と同時に締結され、ICBMと潜水艦発射弾道ミサイルSLBMの現状を凍結するもの。制限数は米国のが少ないが米国に有利な戦略爆撃機が含まれていない、ミサイルに搭載される核弾頭は制限されていないので米国に有利である。

SALTII条約。1979年に署名されたSALTII条約の基本構造は米ソに同数の制限を課している。ICBM基地、SLBM発射基などを数を制限すると同時に、個別誘導複数目標弾頭MIRV化ICBM、MIRV化SLBM等の制限を課している。

しかし上限が高すぎること、質的な規制が含まれていないこと等不十分な内容であった。またソ連のアフガン進行、米国内でも批判が起こり、結局批准されなかった。

 

第三節 中距離核戦力INF条約

INFとは米ソ間で直接攻撃しうる戦略兵器でなく、ソ連と西欧の間の戦域における核戦略である(射程1000から5500キロ)。交渉の初期は実質的な交渉は行われなかったが、1985年ゴルバチョフ以降交渉が進展するようになる。1986年には一旦交渉は進んだが、米国のSDIを巡る対立のために実現しなかった。1987年の交渉はINFの問題を他の問題と切り離して進めていくことになり、レーガンとゴルバチョフで合意が成立した。

ただし、核弾頭は条約の対象となっておらずミサイル廃棄の前に取り外され保持された。この条約で制限されたことは限られたものであったが、米ソ間でこうした交渉が成立したことは大きな成果であり、その後のSTARTにつながる。

この条約では自国の検証技術手段以外に、現地査察を導入されている。

 

第四節 戦略兵器削減START条約

米国はSALTII条約は致命的な欠陥を持つと批判し、ソ連に対してSTARTとすべきであると主張した。

内容は戦略運搬手段、核弾頭も削減することになっている。条約の検証については基本的にINF条約を踏襲している

ソ連崩壊後、12の共和国に分かれた。そのためにロシア以外の国にも核が拡散することになるが、STARTIの議定書リスボン議定書が成立し、ロシア以外の国では核兵器の撤去がされることになった。

そのごSTARTII条約が署名されたが、米国は条約と一体となる議定書に批准していない。現在のブッシュ政権はSTARTプロセスを放棄し、新たな枠組みとして戦略攻撃力削減SORT条約を作成し、STARTII条約は成立しなかった。

 

第五節 戦略攻撃力削減SORT条約

ブッシュ(Jr)大統領は冷戦時代のソ連との敵対関係を前提にしたSTARTではなく協調関係に相応しい新たなプロセスの必要性を提唱した。

SORT条約は全五条からなり、

1)実戦配備の戦略核弾頭を削減、

2)STARTIが効力を持ち続けることの確認、

3)履行確保のため二国間履行委員会の設置、

4、5)は条約の批准・発効・有効期限・脱退に関するものであるが、有効期限については2012年とすると同時に条約の義務を完了した翌日に終了することが規定されている。脱退は自国の志向の利益を危うくしているかどうかに関わらず、書面に通告の後3ヶ月で脱退できるとされている。

こうして成立したSORT条約には課題も多い。

第一に上限が高すぎる点がある。

第二にSTARTIII条約の枠組み合意で合意されたことより後退している点である。STARTでは軍備管理・軍縮条約として本格的な内容を持っていたのに対し、SORTは合意された内容よりも合意されたこと自体が重要視されている感がある。SORT条約が軍備管理・軍縮の目標である戦略的安定を作り出せるとは限らない。

 

第六節 核兵器削減の展望

第一に必要なことは、戦略攻撃力削減条約の確実な実施である。SORT条約は検証規定も含んでいないし、削減のスピードもSTARTより遅い。両国が友好関係に入っているならば、より実質的な交渉ができるはずである。

第二に緊急の交渉が必要とされるのは非戦略核兵器の規制および削減である。冷戦直後に米ソは海外に配備されたこの種の核兵器の多くを撤去したが、これは両国が自主的に行ったものに過ぎない。


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