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『日はまた昇る』 [書籍:『』「」付記]

日はまた昇る――日本のこれからの15年

日はまた昇る――日本のこれからの15年

  • 作者: ビル・エモット
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2006/01/31
  • メディア: 単行本

 

『日はまた沈む』という本をご存知でしょうか?1989-1990くらいに出された本で、1993年の日本のバブル崩壊を予想し、ベストセラーになった本です。

その著者であるビル・エモット氏が約15年のときを経て世に出した本、それが『日はまた昇る』です。 


この本はタイトルからも分かるように日本経済復活を宣言し、長い15年間を経た後の今後15年の日本経済は、無論留保をつけながらですが、明るいものであるということを予想しています。

著者、そして訳者も書くように日本経済の低迷は実に長いものでした。長い思い切った改革はなされることも無く時間が過ぎ去っているように見えました。このまま、日本は東のほうの小さい国にまで衰亡してしまうのではないか、という悲観論も多く流れたよう思います。

しかし、とこの本は述べます。気がつけば今の日本の制度は10年前と比べれば驚くほど変化しているのです。昨日今日と比べればあまり変化していないように見える日本しかし、もっと長いスパンで見ると日本は確実に変化しているのです。

日本の官僚、政治家は少しづつでありますが、改革と呼べるものではありませんが、しかし着実にやるべきことをやってきたのです。

「徐々に」

ビル・エモット氏はこれが日本を語る上でのキーワードであるということを指摘しています。日本で改革が行われたことは明治維新とGHQの戦後の改革しかありません。しかし、議論がなされ、長い時間はかかりますが、一度方針が決まれば、着実にその方針に従って行動を行う。それが日本だというのです。

時間がかかりました。バブル崩壊後日本の政府は最初、過ちを認めない、危機は存在しないという態度を採りました。日本が日本の現状を認めたとき、日本は徐々に変化をしていくようになったのです。

 

日本経済は復活しました。OECDが日本の成長率を低く見積もっているが、これは過去の日本の経済の低迷に引きずられている。政府が変化求め続ける限り、日本の経済は順調に成長する。サミットに出るたびに、説教を食らうということにはならないだろう。

2005年9月の選挙は日本の変化が継続されること裏打ちするものとなった。小泉首相がたとえ今年の9月に引退しても、日本がかつての姿に戻ることは最早無い。

無論、懸念はある。長い不況の中、労働流動性が高まっていく中、若者が労働市場に入ることが出来ず、技術の伝承が十分に行われていないかもしれない。しかしまだ十分に取戻せる範囲内だ。

人口の減少は極めて重要な問題である。しかし、日本はかつてから高かった設備投資の成果により、生産性を高めるだろう。隣国中国よりも大きい経済規模を保つことは無理かもしれないが、没落することはないだろうし、一人当たりの所得はもっと高くなるだろう。

中国との関係は重要である。中国が拡大するにつれて、日本経済は劣勢にならないか、という懸念はすくなくとも今後数十年においては妥当ではない。中国が得意とするのは、国内の豊富な労働力に支えられた、ローテク・ミドテクの製品であり、日本が得意とするのはハイテクの製品である。中国製品と競合するのは全体の20%程度に過ぎない。

また、自動車、ナノテクノロジー、ロボット産業、環境関連技術等は今も、そして今後暫くは日本は世界の最先端を走り続けるだろう。

 

日は一度沈んだ。しかし、長い夜を経て再び日はまた昇る。


と、こんな感じのことが書いてます(ちょっと微妙に本文に書いてないことまで書いてしまってる気がしないのでもないですが)。

日本の事情をかなり理解して書いているなあ、というのがよく分かり、また実際に大変分かりやすい文章で良かったです。

その辺の日本人(僕含め)よりも日本の経済の実態を理解しているように思います。むかしから日本人は外国からの評価に弱いもので、僕もその一人なので恐縮なのですが、こういうふうに外国の人に太鼓判を押してもらうとうれしいです。

特に日本は「徐々に」変化する国である、というのは日本に対して相当の知識がないと指摘できないですね。

あとこの本の指摘の中で大事だと思ったのは、私達はすぐ最近と比べてあまり変わっていないことを嘆きますが、同時にもっと長いスパンで見るできである、ということです。

なるほど向かいと比べる日本もずいぶん変わったように思います。90年代の気分だとホリエモンとか出てこれなかったでしょうからね。

 

ところで、この本には対中関係、靖国問題についても言及がなされています。靖国の箇所について言えば、日本人から見れば少し奇異に見えると思いました。

しかし、余計な靖国に知識とか日本人の宗教観についてあまり理解していない分、主観を排した論理でものを語っていたように思い、新鮮でした。あと、大事なのは英語圏とかの人は靖国をこんなふうに見てるんだと、というのが分かって参考になるのではないかと思います。

あと、東アジアについて、このまま、特に共産党政権のままで、中国が東アジアの覇権をとることは無いように思える、ということについても指摘してました。こちらは幾分論理と実証が弱かったですが、やはり日本も日がアジアの主導国の一つとなるであろうことを予想しています。

 

なんかどこかの省庁の説明会に行ったらやたらこの本についての言及がありました。省内ではやってるのかな。

そんな感じの本です。


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コメント 1

恩田川 鴨次郎

日本は徐々に変化する国というのには同意できません。
且つて、日本企業は、年功序列、終身雇用、ボトムアップ?があるので日本企業だと言われてきました。今の中高年はそういわれて安給料を我慢して働いてきたのです。それがどうでしょうか?今度は180度手のひら返しで、中高年のリストラ、能力主義に変わったと言う。
日本は、明治維新、敗戦、今回のデフレと何かをきっかけに全国民的に180度手のひら返しが出来る体質を持ってます。これだけ、極端に変化できる国民は類を見ません。鬼畜米英は神様、仏様、マッカーサー様になるし。イラクの民も是非、この変わり身の早さは見習うべきです。そうすれば、国の発展間違いなしです。しかし、これは、日本人個人に主体性というか、生きる信条が薄いことからきているのではないでしょうか?
横を見ながら行動するので、あるオピニオンが半数を超えるあたりから、中間派がなだれを打って傾き、一億総・・・といわれることになったのです。
このところ、二極化が言われてますが、グローバルで見れば、むしろ、普通の国になった訳で、アメリカのように平均的な米国人がいない国になり、これからは日本も一挙には変身できない国になっていくのでしょう。
by 恩田川 鴨次郎 (2006-03-11 12:24) 

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