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newsweekのCSR、企業の社会的責任特集 [国際法・国際関係]

ちょっと古いですが、2005.6.15号のnewsweek日本版から、面白かった記事を紹介します。この巻ではCSR特集をやっています。今回は少し前にその記事についてまとめたものを、貼り付けます。

国際関係なのか、国内問題なのか、どっちに分類すべきか迷いましたが、国際関係に入れておきます。これからの国際関係は企業、特に多国籍企業の動きを注目しないと、少なくとも意識しないと、いけないと思うので。

ニューズウィーク日本版 Newsweek Japan

 

 

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳される。CSRはその意味が明確に定義されているわけではなく、多様な意味を持つ概念である。単なる社会的責任という意味ではない、1992年のリオ宣言などでうたわれた「サスティナビリティ=持続可能な発展」の概念が取り入れられている。
 「持続可能発展のための世界経済人会議(WBCSD: World Business Council for Sustainable Development)」はCSRを「企業が従業員、その家族、地域社会、そして社会全体の生活水準の向上のために、これらのステークホルダーと協働しながら、持続可能な経済発展に貢献すること」と定義している 。
 CSRの概念が提唱されるようになったのは、近年、冷戦終結の頃からである。原因は世界を席巻するglobalizationであり、CSRの課題とするところは、拡大する貧困、急速に進む地球の温暖化であり、均衡のたれたglobarizationである。
 先進国企業を中心にCSRはこの数年急速に受け入れられるようになっている。しかし、企業は何故CSRを受け入れるのか?CSRは企業にとって必要なのか、ということについては現在も激しい論争が存在している。
 1976年にノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンはCSRの概念を否定する最も著名な論者の一人である。フリードマンは市場原理主義の立場から、企業の責任はできるだけ多くの利益を上げて株主に還元することにあるのであり、企業が環境保護や地域貢献に資金を費やすことは、無駄であると論じた。
 この考えは市場への強い信頼を前提にしているが、アジア通貨危機など、市場への信頼は絶対ではない。米国でもCSRが広く浸透するようになったのは、ITバブルの崩壊と相次ぐ会計スキャンダルに米国企業が恐れを抱いたためであるといわれる。企業への信頼の失墜、経営者は株主、顧客、従業員からの訴訟を気にするようになった。
 CSR肯定派にはマイクロソフトのビル・ゲイツ会長、BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)のジョン・ブラウン会長である。例えば、ジョン・ブラウン会長は「ビジネスは崇高な目的を持つべきか、それはyesである」と述べている。
 CSRの典型例として挙げられるのが、ナイキの事例である。米国のスポーツ用品会社ナイキは、1990年代半ば開発途上国のある契約工場の労働環境について、NGOから低賃金や言葉の暴力等に対する厳しい批判を浴びた。また、生産縮小に伴う工場撤退に際して、インドネシアの契約工場ドーソン・インドネシアの契約打ち切りを決定したが、この決定に対して現地従業員や地域住民が強烈に抗議し、NGOによる抗議運動へと発展して訴訟にまで至った。
 現在ナイキは積極的なCSR改革に取り組んでいる。2005年5月ナイキが発表したCSR改革は多くの人権団体、労働組合から高い評価を受けている。報告書ではナイキ・ブランドの製品を作る700以上の下請工場の名前を公表した。この公表はナイキの活動について隠し事をする幅を大きく減らすことになる。ナイキの一連のCSR改革はCSRを取り組む企業へのモデルケースを提供している 。
 しかし、企業にCSRが本当に必要なのか?とうという疑念は消えていない。世界最大の多国籍企業であるウォルマートは上の企業とは異なり、CSRのために儲かりそうにないことにお金を使うことを一切行っていない。従業員、顧客が大事であることを認めつつも、どれだけ批判されても労働組合を組織を認めることは無い。ウォルマートの顧客もこうしたウォルマートの行動を気にしているということは無い。人々がウォルマートで買い物をしなくなったわけではない。
 つまり、CSRの重要性は認められつつも、CSRで生じるコストは誰がどのような責任で負担するのかという問いへの答えは、十分に答えられていない。多くの企業のCSR報告書はこの点について沈黙したままである。この問題に対する答えはあるのだろうか?
 これについて理想的な答えは。「利益の追求と貢献の融合」となるだろう。だが現実にこのような方法はあるのか、現在多くの企業がこれを模索している。
 トヨタのハイブリッド車「プリウス」の米国での成功は重要な示唆を示していると考えられる。石油の高騰、枯渇への懸念とあいまって、プリウスの市場へのヒットは他の米国企業にハイブリッド車の投入を決定させた。ナイキのたどりついた結論は、「CSRのために余分なお金を払う消費者をターゲットにすること」である。CSRのモデル企業へと変身を果たしたナイキはかつてよりもブランド価値を向上させたといえる。フォード社は省エネによるコスト削減を行うことで収益率を上げようとしている。
 最も新しい取り組みとしては、CSRそのものを商売にしてしまうことである。家庭用品大手ユニリーバは、小分けにした安い石鹸とシャンプーを作ってインドなどで新たに巨大市場を開拓している 。
 「利益の追求と貢献の融合」これができる企業であるなら誰にとても最高であろう。現在ではCSRを単なる慈善と思っている企業だけではなく、CSRを重要な経営戦略とみなし始めた企業も出始めている。

最後に、わが国企業におけるCSR取り組みを見ておきたい。わが国では省エネ技術等の開発が進んであり、トヨタのように環境保護の取り組みと利益の拡大を果たしている企業が多く存在している。しかし、わが国企業は環境分野におけるCSRで世界的に高い評価を受けているものの、人権・労働・情報公開などの分野で低い評価を受けており、今後の課題となる。例えば「Newsweek 日本語版」Vol.20-23(2005.6.15)では環境部門におけるCSRでは主要先進国を引き離しつつも、企業統治・従業員・社会などの評価では低い評価を受けており、企業統治では最下位の評価を受けている。三菱重工のリコール隠しのように不透明な隠蔽体質は日本企業にいまだ存在し続けている。

CSRを日本企業がどこまで考えるようになるのか、このことも今後日本企業が世界を相手にどのような発展を遂げるのか、ということに関連を持っているのかもしれない。


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