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裁判権免除 2006年7月21日最高裁判決 [国際法・国際関係]

暫く実家に帰っていたのですが、戻ってきました。やはり実家はいいですね。

それはともかく、タイトルの判例を今頃になって考えてみるという話です。

 

裁判権免除とは、国際法上用語で、外国国家に対する訴訟について国内裁判所が管轄権をもたない、という原則です。

もうちょっと簡略言えば、国と国は対等であるという前提の下、ある国の裁判所で、外国国家を被告としてはいけないですよ、ということです。

裁判権免除に関しては、国家のどの行為に免除を享有させるべきか、という問題があります。かつて(今も無いことはないですが)、絶対免除主義か制限免除主義か、ということが議論されていました。

絶対免除は国の行為であるならば、全ての行為に免除が与えられるという考えで、

制限免除では、国の行為のうち、一定の行為には免除が与えられ(「主権的行為」と言います)、その他の行為は免除が与えられない(「業務管理行為」「商業的行為」などと言います)、という考え方です。

現在では、多くの国が制限免除主義を採用しており、慣習国際法としての地位を得たといわれております。

ただし、国家が自国裁判所において、外国国家に絶対免除を与えること(制限免除で免除を与えなくても良いとされる業務管理行為にたいしても免除を与えること)は、少なくとも当該国家への国際法違反を構成するわけではない、ということは留意する必要があるでしょう。そして、そのような絶対免除を長い採用し続けていたのではないかといわれていた国の一つとして日本がありました。

2006年7月21日の最高裁の判断は1928年の大審院が採用した絶対免除(但し、当時の判断としては絶対免除で問題は無い)を明確に否定したものと評価することができるように思います。

絶対免除か制限免除かということの、この判決により決着がついたように思います。そこで、主権的行為と業務管理行為をどのように区別をつけるのか、という課題が残ります。2006年判決では「その行為の性質上、私人でも行うことが可能」かどうかを基準にしています。

基準についても一応争いがあって、単純に言えば、国の目的により主権的行為かどうかを判断する「行為目的説」、契約など行為の性質に着目する「行為性質説」があります。前者が、国の免除の幅が大きくなり、後者が免除の幅が小さくなる傾向にあります。最高裁は、後者の「行為性質説」を採用していると解釈できるように思います。

ただ、世界の免除の実行を見ると、行為の性質を見ながらも、前後の文脈とか目的を加味して考えたりと性質以外の考慮されることがあります。本判決でいえば「特段の事情」が無い限り、という表現が存在してますが、これがどういう意味を持つのかは若干考える必要があるのかもしれません。

 

日本も遂に制限免除主義採用化と思うと若干感慨深くなります。


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