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第八章 通常兵器の規制と禁止 [軍縮・不拡散問題入門]

あと二つありますが、宇宙とかなんで、これで『軍縮問題入門』の紹介は終了しようかと思います。気が向いたら宇宙とか南極における軍縮もやりたいです。


軍縮問題入門

軍縮問題入門

  • 作者: 黒沢 満
  • 出版社/メーカー: 東信堂
  • 発売日: 2005/10
  • メディア: 単行本

第八章 通常兵器の規制と禁止

第一節 欧州通常戦力CFE条約

1990に成立したCFE条約はNATOとワルシャワ条約機構という二つの軍事同盟の中、通常戦力をより低いレベルにで均衡させるために成立した画期的な条約である。

冷戦中、欧州で東西両陣営が課題としたのは、いかにして意図しない戦争を勃発させないかということであった。このなかで通常戦力の軍備管理が核軍縮と並んで重要視された。

1970sに入り、内政不干渉と国境線の現状承認を前提とした欧州安全保障強力会議CSCEの開催と、相互均衡兵力削減MBFR交渉と呼ばれる兵力削減交渉の開始が東西間で合意される。

CFE条約は欧州全ての国家が参加するCSCEにおいて、1990年に成立し、NATOとワルシャワ条約機構の全ての当事国が参加する枠組みが実現したのである。

CFE条約概要。適用範囲は大西洋からウラル以西であり、ロシアについてはウラル以西の領域だけ適用される。

①締約国グループごとの兵器保有数の制限。同時に一国が保有できる数量の制限し、一国が突出しないようにする。

②保有兵器の配備制限。特に中欧に兵力が集中しないよう配慮

③削減方法の制限と方法。削減、廃棄に関わる負担軽減のために民生転換の例外あり。詳細な査察あり(現地査察、抜き打ち査察等)

CFE-1A合意。CFE参加国は1992年7月に兵員数規制のための政治的取り決めを行っている。

CFE条約適合合意。ソ連が崩壊し、NATOの東方拡大が現実になったことでCFE条約の前提が崩れた。また、ロシアはチェチェン紛争など民族問題を抱えており、枠組みの修正を要求した。

1999年11月、CFE条約適合合意が成立する。本合意は兵器の上限を軍事同盟ごとから個別国家ごとに改定。保有上限の総数が約9000個ほど下方修正された。外国軍駐留については当該国の合意が必要であることを明記している。

NATO新加盟国であるハンガリー・チェコ・ポーランドは平時に外国軍を入れないことが合意された。ロシアに対しては兵力配備制限を上方修正して、ロシアに対して配慮が行われている。

しかし、合意の内容に反してロシアがグルジア・モルドバなどに軍隊を駐留させていることから多くのNATO諸国は批准を行わず、未発行である。

CFE条約とCFE-1A合意の履行状況は概ね良好であり、各国の信頼醸成も進んでいるをみなして良い。こうした枠組みの中、各国は通常兵器配備について情報交換を行い、通常兵器に関する透明性を向上している。

今後はロシアによる駐留問題やNATOによるバルト三国支援問題なども解決しながら条約適合合意が批准されるのが望まれる。

 

第二節 国連軍備登録制度

国連軍備登録制度は湾岸危機および戦争の教訓から始まっている。イラクが90年までにソ連、フランス、中国等から集中的に購入していた武器が、クウェート侵攻に用いられたからである。

1991年、日本とEUが共同して「軍備の透明性」決議が国連総会に提出され、全会一致で成立している。この決議では不安定かつ急激な軍備の蓄積に対する懸念を中心課題としている。

概要。制度の目的は兵器の国際移転を国連に報告することにより、通常兵器移転の透明性を高め、かつ、急激なな軍備移転にたいして国際社会が早期警戒できるようにすることである。

国連が指定するカテゴリーは①戦車、②装甲戦闘車両、③大口径火口システム、④戦闘用航空機、⑤攻撃ヘリコプター、⑥軍用戦艦、⑦ミサイル・同発射装置である。これはCFE条約に準拠したものである。

1992年制度発足と同時に政府専門家会議が招集され登録に関する技術的手続きが検討されている。そしてこの勧告を受け、総会は兵器移転を国連事務局に登録することを決定した。

2000年政府専門家会議では、懸案であった、大量破壊兵器に関連する兵器の登録問題について勧告し、2003年には携帯型防空システムMANPADの「ミサイルおよび発射基」カテゴリーに追加するなどを検討している。

軍備登録制度は今日まで13年分の実績を有志、主要国を含め100国以上が報告している。

同制度の課題として、登録範囲の拡大、登録対象兵器のカテゴリーの追加、地域軍備登録制度、通常兵器の移転規制があるが、それぞれこれまでそれなりの進展が見られる。今後さらなる改善とともに、同制度が国際社会の平和と安定にどれほど貢献したか、ということをアピールし、同制度の異議を高めることも重要である。

 

第三節 対人地雷禁止条約

ICRCによれば1990s初頭、世界77国に1億3000万個の対人地雷がうめられ、年間24000人が被害にあっている。また対人地雷の種類も極めて多く存在している。

対人地雷を制限する条約には、特定通常兵器使用禁止制限条約CCWの第二付属議定書がある。83年に発効した同議定書は対人地雷が無差別に民間人に使われることを禁止している。しかし、同議定書は、

①対象が国際武力紛争のみで内戦が含まれていない、②プラスチック製地雷など捜索困難な地雷は対象に含まれていない、③地雷の譲渡や移転に関する規定がない、④条約の監視手段がない、などの不備が存在していた。

90年代に入り、NGOやUNICEFなどの国際組織が中心に対人地雷の全面禁止を訴え、現状を打破しようとする動きが世界に広がった。このため同議定書は改正交渉が行われ、一部改正が実現したが、NGOおよび一部政府からは新たな条約を作成する動きが見られた。

オタワプロセス。1992年欧米のNGOが中心となって「地雷禁止国際キャンペーンICBL」が立ち上げられた。これにカナダなど一部国家が積極的に協力した。1996年にカナダでオタワ会議が開催される。1997年12月3日オタワで条約の署名が行われる機関がオタワ・プロセスと呼ばれるようになった。

オタワ条約の要点としては、

①地雷の使用、貯蔵、製造、および移譲を如何なる場合にも全面的に禁止する、

②貯蔵されている対人地雷については、自国が条約に加盟してから4年以内に廃棄することが義務付けられた、

③条約履行のために可能な範囲内で国際協力および援助を行うことが決定される。

 

オタワ条約の締約国会議に合わせてICBLが発行している『ランドマイン・モニターレポート2004』によると、

①条約発効時、地雷使用国は15あったのに対し、4に減少したこと、

②50近かった地雷生産国は15になったこと、

③加盟後4年以内に廃棄がすることになっている貯蔵地雷は65国が廃棄作業を完了したこと、

④400万近い対人地雷、100万近い対車両地雷が除去され、1100万平方キロに及ぶ面積が安全な土地に戻った、

⑤かつては年間24000人ほどいた被害者も15000人から20000人ほどに減少した

⑥政府や国際機関による援助は13億5000万ドルに達した。

ことを報告している。

今後は未だ条約に入っていない米露中などの未加盟国をどのように参加させるのか、そして地雷を生産し続ける非国家主体NSAをどのように説得するのか、と言うことが課題になってくる。オタワ条約の普遍化を目指しての課題はまだまだ多い。

 

第四節 小型武器の規制

国連によれば90年代に発生した主要な紛争49のうち47の紛争で小型武器が最も主要な手段として用いられている。小型武器の規制はこれまで軍縮の対象となってこなかったが、その理由は、国家間戦争の主要兵器でなかったこと、小型武器は紛争の原因というより、むしろその所有は市民の自己防衛のための権利であるを考えられてきたためである。

しかし、90年代に頻発した地域紛争、宗教紛争において、小型武器が紛争を長期化させ、助長する事例が報告されるようになって国連を中心としてその対応が考えられるようになった。

小型武器問題はガリ前国連事務総長が『平和への課題:追補』と題する報告書で「ミクロ軍縮」を強調したことを契機として、国際社会での争点と発展した。この問題について日本の果たした役割は大きい。

1995年の小型武器決議を下、96年に日本の堂之脇元国連軍縮大使が議長を務める国連小型武器政府専門家パネルが発足した。

そして小型武器に関する国連決議開催を求める決議案は2000年の国連総会で採択され、会議自体は2001年7月に開催され、行動計画を採択した。

行動計画では、小型武器非合法取引に対するトレーシングのための措置、実効的な輸出入承認制度の確率・維持、小型武器問題の全ての面における透明性の向上を図ることなどが盛り込まれた。行動計画は2002年1月の国連総会で承認されている。

行動計画採択には、これまで国連や地域機構が実施してきた小型武器問題への取組みを総括したものであり、これらの取組みが国連会議における行動計画の作成に貢献した。

また対人地雷禁止条約で勢いを得た各国のNGOは規範構築、開発・復興問題などそれぞれの分野で小型武器問題にも取り組んでいる。

特に1998年に設立された小型武器ネットワークIANSAは、世界のNGOのまとめ役として、国連小型武器会議の開催に尽力したことで知られる。

2001年の小型武器決議後、国連は各地域で啓蒙活動と計画のないよう時限のための行動を実施している。

今日小型武器問題で大きく取り上げられる課題にトレーシングがある。この問題に取り組むため国連は、政府専門家会議と国連小型武器トレーシングOEWG(作業部会)の編成を命じている。

課題。小型武器問題の最大の課題は、この問題に関する国際社会のモメンタムの維持である。紛争が終結し、一応の安定が訪れると、国家が小型武器問題に取り組む動機は弱くなる。こうした取組みが成功すればするほど、国家のインセンティブは弱くなる。この分野の軍縮問題ではNGOは常に新たな争点を提起し続けなければならない。近年一部のNGOの新たな活動として子供兵士、武器貿易条約、小型武器と女性の問題、弾薬等規制の問題を争点として取り上げている。

このように、小型武器問題は2006年の再検討会議にむけて、行動計画の進展を図る動きと新たな問題うぃ提起する動きが存在している。これまでのところ小型武器問題では特別な条約や枠組みは設けられていないが、だからこそ今後の動きに注目しなければならない。


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