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第三章 核実験の禁止 [軍縮・不拡散問題入門]

20000HIT超えた。その瞬間に立ち会えなかったけど嬉しい。これからも頑張ります。


軍縮問題入門

軍縮問題入門

  • 作者: 黒沢 満
  • 出版社/メーカー: 東信堂
  • 発売日: 2005/10
  • メディア: 単行本

第三章 核実験の禁止

第一節 核実験禁止の意義

核実験という場合、通常核爆発実験を意味するが、爆発も伴わない核実験も存在しており、各種部品の耐久性のテスト、強い襲撃を加える安全性テスト、コンピュータシュミレーション、未臨界実験などがそれに当たる。本章では条約交渉が実際に進められている、核爆発実験を対象とする。

核実験の目的は核兵器開発のために必要な技術的問題を検討することだけではない。自ら核攻撃能力の誇示や、反撃能力があることも示す核抑止戦略としてのデモンストレーション、また実際の兵器としての実用性確認のためではなく、自国の国威を発揚するためということも重要な目的となる。

 

一方核実験禁止の目的は、第一に国家の核開発能力を制限することによる核兵器拡散防止、

第二に、核兵器国による核兵器の改良を抑えることによる質の面での核軍縮、

第三に、核実験の禁止に合意することにより、緊張緩和を促進することによる、信頼醸成措置CBM、

第四に、放射性物質による環境汚染、

が存在している。

 

核実験は現在まで専ら軍事目的で実施されてきたが、核爆弾の開発初期では、大規模土木工事や地下資源開発など、平和利用目的核爆発が真剣に研究されてきた。NPT5条はその反映であるが、大量の放射性汚染等に鑑み現在では非現実的なものとされている。

 

第二節 部分的核実験禁止条約PTBT

1963年米英ソはPTBTに合意、地下以外での核実験を停止した。

PTBTは地下核実験、検証を棚上げして短期間に作成されたが、その背景としては、1)核爆発実験への国際的批判、2)地下核実験のための技術的な進歩があり、核開発に大きな障害がなくなったこと、がある。

しかし地下核実験技術が確立していなかったフランス・中国はPTBTに参加せずに大気圏内での核実験を続けた。

PTBTは地下核実験を禁止しないことから核軍縮には役立たなかったが、核軍縮、核不拡散のための現実的な第一歩を踏み出したものであり、将来の全面核軍縮を最終的な目的として定めた点、評価できる。

 

第三節 包括的核実験禁止条約CTBT

CTBTのための実質的交渉は1993年のジュネーブ軍縮会議CDで合意された。

その背景には、1)冷戦の終結、特に米露間の核開発競争の解消、

2)技術の進展により既存兵器の維持、小型核の開発であれば、未臨界実験、コンピューターシュミレーションにより行うことが可能になったため、

3)核兵器国にとって、核兵器国間の軍備競争によりも核不拡散がより重大な問題として浮上したこと、

が挙げられる。

しかし実際の交渉になると、いくつかの問題、特に、具体的な期限を設けての核兵器廃絶へ言及するかどうか、という問題と発効要件を巡る問題で最終合意が成立しないままに交渉が事実上打ち切られた。

CDではCTBTに向けての合意は成立しなかったが、CTBT早期成立に熱心であったオーストラリアを中心とする国々は、この状況に不満を持ち、特に最後の段階まで反対していたのはインド一国だけであることか勘案し、CTBTの条約交渉は実質的に合意が達成されているとして、CTBT草案を自国提案として国連に提出した。

そして結果的に総会では圧倒的多数の支持を受け採択、通常の条約同様、署名、批准の手続きが始まった。

 

CTBTは軍事目的か平和目的かを問わず、規模の大小を問わず核爆発を伴うあらゆる実験を禁止すると同時に、他国の核実験のために自国管轄の場所を使用させるなどの支援を禁止している。

またPTBTと異なり、義務内容の実効性を確保するために、独自の国際機構と検証制度を設けている。

また発効要件として原子力関連施設を保有する44カ国の批准を必要としている。これは当該44国(印、米等含む。日本も)に実質上の拒否権を与えるものであるが、一国でも参加しな国家いると条約の目的がそこなわれることから、敢えて厳しい要件を課している。

条約が3年たっても発効しないと加盟国間で締約国会議が開かれる。現在までに3回ほど開かれている。

さらに、条約の再検討については加盟国の中で一国でも反対する国がいると変更はできないことになっている。

 

CTBTは条約の信頼性確保のために、独自の国際組織をつくり、世界的な監視ネットワークを作ることが意図されている。CTBTは締約国会議、執行理事会、監視ネットワークを担当する国際データセンターを含む技術事務局の三つの内部機関からなるCTBT機関を設けている。

国際データセンターは地下核実験を探知する地震波探知ステーションをはじめ、放射性降下物探知ステーション及び微気圧変動探知ステーション、水中音探知ステーションからなる監視ネットワークを維持・管理し、必要なデータを収集するとともに、締約国が求めればそのための必要な支援を行うことになっている。

条約違反の疑いがある場合、締約国はその国に対して協議を申し込むことができ、それでも疑いが解消されない場合、現地査察を行うように執行理事会に要請できる。

 

第四節 核実験禁止の展望

CTBTは署名174国、批准は120国にのぼる。発効に必要な44国で言うと、印パは署名してすらいないし、米国中国も批准をしていない。また北朝鮮、イラン、イスラエルなど核兵器開発疑惑国も批准していない。

米国はクリントン政権時、批准に積極的であった。上院で多数を占める共和党は批准を拒否した。その背景には、国際的制度による抑止効果への不信、新たな核戦略のためには核実験が必要であることが挙げられており、自らの力により自国の安全保障を保とうという伝統的な安全保障観への回帰が伺われる。

現在、締約国会議のほかにCTBT発効に積極的な国家によるCTBTフレンズが作られており、批准のための働きかけ、核実験モラトリアムの継続を呼びかけている。

しかし、上記国家の批准の見込みは立っておらず、いつまでモラトリアムが続くのか不透明である。CTBTの将来には現在悲観的な見方が多い。


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コメント 2

ジェラミイ

20,000HITおめでとうございます。
未来のエリート官僚の青田買いのつもりで応援してます!
by ジェラミイ (2006-03-16 11:45) 

mof

有難うございます。これからも応援宜しくお願いします。
青くても「田」になれるよう努力したいです。
by mof (2006-03-17 00:40) 

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