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序 軍縮の現状と課題 [軍縮・不拡散問題入門]

軍縮問題入門

軍縮問題入門

  • 作者: 黒沢 満
  • 出版社/メーカー: 東信堂
  • 発売日: 2005/10
  • メディア: 単行本

ちょっと前に、某研究所で「軍縮・不拡散講座」の参加者を募集していたので、なんとなしに応募したらなんとなく入れてもらいました。

講座の講師は日本を代表する軍縮や不拡散の専門家の方々。大変楽しみです。ということで予備勉強かつ予習をかねて、送られてきた一冊の本、『軍縮問題入門』ですが、これをこれから何回かに分けて紹介したいと思います。

 

ということで早速序章から

 


序章「軍縮の現状と課題」黒澤満

第一節 現在の国際社会と軍縮の進展

21世紀に入り米国のブッシュ大統領は国際協調を無視した行動を繰り返している。

9.11テロは米国にテロリストに大量破壊兵器が用いられる危険性を指摘した。その後のイラク戦争では、イラクは大量破壊兵器も保有している、そしてアルカイダとつながりを有している、という理由の元、国連の決議を無視してイラクに対して戦争を仕掛けた。

冷戦以降、集団安全保障、紛争の平和的解決の方向に進んでいたが、21世紀には行って不安定になり、むしろ力による安全保障が求められる傾向は増えている。

 

テロと大量破壊兵器(WMD)の拡散が問題と感じる米国は軍縮よりも不拡散を重視する傾向を強めた。

NPT核不拡散条約は1995年に無期限延長がなされたが、1997年に「保障措置」のための追加議定書も作成され、秘密裏の核開発について査察が可能となった。現在多くの国が追加議定書に入るための努力がなされている。

旧ソ連圏ではかつて開発したWMDの「管理」が現在不十分である。管理のための援助が必要となる。

核の闇市場発覚以降、「輸出管理」も強化される傾向にある。特に非国家主体へのWMD移転については厳しい措置が採られるようになりつつある。

大量破壊兵器運搬手段である「ミサイル拡散」も重大な懸念の一つである。また、米国は迎撃のための「ミサイル防衛」の強化に乗り出している。

2003年5月には従来手薄であった、WMDを違法に輸送する船舶を海上で捕獲し拡散を防止する、「拡散防止構想PSI」が開始されている。

 

戦略核兵器の削減は米ソの二国間交渉が重要である。STARTI条約で半減したが、STARTII条約は発効しなかった。そして新たなプロセスとしてSORT条約が署名され発効している。

米国はミサイル防衛を優先課題として位置づけABM条約から脱退した。

NPT体制についてはイラク・リビア・北朝鮮による条約違反が指摘され問題となっている。近年原子力平和利用のもと多くの支援を受けた後に条約を脱退する国をどうするかが問題となっている。

 

冷戦後、地域紛争、国内紛争が多発し、小型武器・地雷などが大量に使用され戦闘員のみならず、女性や子とどの被害者が増大し、人間の安全保障が訴えられるようになった。

対人地雷についてはオタワ・プロセスという交渉が開始され対人地雷禁止条約が署名・発効した。小型武器については国連小型武器会議が開催され、小型武器の非合法取引の防止、根絶のための行動計画がコンセンサスで採択された。

 

 

第二節 軍縮交渉の概観

戦後初めて行われた軍縮会議は核問題で原子力委員会が設置されたが、米ソ対立で進展しなかった。

その後、1947年通常軍備委員会、1952年国連軍縮委員会(DC)、1978年以降の国連軍縮特別総会と国連は軍縮のための議論の場として一定の役割を果たしている。

1952年DCがソ連の不満により停止したことを受け、1960年に東西同数の原則を採用した10カ国軍縮委員会が、その後1962年に非同盟8国を入れた18カ国軍縮委員会が、その後日本などを入れ軍縮委員会会議となり、1978年には31カ国となり、会議が開かれた。この会議からはNPT、海底核兵器禁止条約、生物兵器禁止条約等が作られた。

この委員会は1978年の国連軍縮特別総会を契機として国連との関係が強化され、1984年に軍縮会議(CD)となり現在に至っている。1993年い化学兵器禁止条約が作成され、94年から96年には包括的核実験禁止条約の交渉が行われた。しかし、その後は交渉の議題が合意されず実質的に機能していない。

 

米ソ二国間交渉は1960年末からの戦略兵器削減交渉SALTが開始された。1980年代には戦略兵器削減交渉STARTと中距離核戦力INFに関する交渉が平行して行われる。この交渉はゴルバチョフ以降ソ連が真剣に交渉に参加するようになり、中距離核戦力条約、1991年にはSTARTI条約が署名された。STARTIIは発効しなかったが、2002年から戦略攻撃力削減条約SORTが締結された。

また地域的な非核地帯条約が設置されるようになった。

 

第三節 国際平和と軍縮の関連

軍縮は国際の平和と安全のための一つの手段ではあるが全てではない。伝統的な安全保障の観点からは、武力行使の禁止、紛争の平和的決、集団安全保障の3つの要素が軍縮と相互依存関係にある。

3つの要素を効果的に促進することが軍縮のためになるし、逆に3つの要素が強化されることで軍縮の素地ができる。

 

第四節 今後の軍縮の課題

核軍備競争の禁止。冷戦後、米ソ間の核開発競争は終わり、軍縮の方向で進んでいるが、競争が完全になくなったわけではない。質的観点から包括的核実験禁止条約(CTBT)の徹底、量的観点からは兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の締結が望まれる。

CTBTについては、インド・パキスタンの核実験、イスラエルの非署名、また米国も批准を拒否している。カットオフ条約については中国以外の4核兵器国は条約が発効する前にその趣旨を守る旨表明している。しかし、各国の意見の相違が今だ多くあり今後の課題である。

戦略核兵器と非戦略核兵器の削減。米露でSORT条約が署名されたがそのプロセスは従来のものにくらべても遅いし、いまだ戦略核兵器の保有量が多すぎる、フランス・中国などの国家を交渉に参加させるためには更なる削減が必要である。非戦略核兵器についての国際法上の規制は無い。小型化可能なこれらの平気はテロリスト等の格好の標的に成りうる。早急な交渉が望まれる・

核兵器の役割の低下。核保有国における核兵器の安全保障における重要度を下げる必要がある。しかし米国は小型核兵器の開発を推進、先制攻撃のドクトリンを発表している。

非核兵器国に対しては核兵器を使わない、という消極的安全保障の法的保障が必要となる。現在核兵器国は消極的安全保障を与えているが政治的な約束であると解されている。

核兵器の先行不使用の原則も確立される必要があると思われる。ICJは核兵器の使用は人道法の一般原則に違反することを判断している。

非核地帯の設置も有益である。

大量破壊兵器と通常兵器。生物・化学兵器については画期的な条約が既に成立しているので今後更に加盟国数を増やすことが重要となる。同時に条約の義務の実施の確保、検証措置の強化も行われる必要がある。

対人地雷禁止条約は成立したが米露中印など地雷大国(?)が今だ署名していないという欠陥がある。

小型武器については今だ法的文書は存在せず、政治的な行動規範がるのみである、内容の強化とともに今後の課題である。


長くやりすぎた・・・次からはもっと簡単にまとめたい。


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