マクロ経済学入門 第9章 インフレとデフレ [マクロ経済学を学ぼう]
前回からかなり時間がかかってしまった。
第9章 インフレとデフレ
1.戦後日本の一般物価水準の推移
・物価指数
CPI(消費者物価指数) …集計の際に基準時点の各品目の数量を固定し、その構成比でウェイト付けして個別価格を集計(ラスパイラス指数)
GDPデフレーター …名目GDPと実質GDPの比、事後的に統計(パーシェ指数)
・日本のインフレ…大体安定。石油ショックのときインフレに。80s後半は円高により、90sは景気の低迷により企業物価・消費者物価ともに低い
2.ディマンドプル・インフレーション
・インフレの原因を財市場における需要の増加により、超過需要が発生することに求める
・マネタリストは貨幣供給量が総需要を変化させる最も重要な要因と捉えた上で、名目貨幣供給量が実質国民所得の増加率を上回って増加することがインフレの原因であると捉える。
cf. 貨幣数量説 M=kPY
(M名目貨幣供給量、P一般物価水準、Y実質国民所得、kマーシャルのkであり不変)
→Pの上昇はMがYより増加する場合に起こる。
・乗数理論やIS-LM分析の場合、財市場の価格が変化しないのが前提。だが、普通財市場で総需要が増加すれば数量だけでなく、価格も上がるはずである。
→完全雇用の場合、総需要が増えても総供給が増えないので、乗数理論やIS-LM分析は完全雇用に対応する水準より低い水準にあるときのみ妥当する。
⇒完全雇用の場合。政府支出Gを増加させた場合(IS曲線右方へシフト)、Yは増加するはずだが、完全雇用時より所得は増加しないので超過需要になり、インフレが発生。しかし、Mが一定の場合、Pの上昇は実質貨幣供給量M/Pを減少させる。したがって貨幣は超過需要になり、LM曲線は左へシフト。完全雇用国民所得水準まで同じ傾向は続く。
→最終的にGの増加は国民所得に影響を与えない。
⇒完全雇用の場合。Mを増加させると、LM曲線が右にシフト。しかし、完全雇用国民所得より所得は増えない。財市場が超過需要になるので物価水準は上昇し、実質貨幣供給量が減少する。その傾向は完全雇用国民所得の水準まで続く。金融政策は国民所得および利子率に影響を与えない。
3.コストプッシュ・インフレーション
・インフレの原因を需要だけでなく、費用(コスト)に求める。費用が上がれば物価も当然上がると考える。
・過度の賃金上昇はその典型例。日本にとってはとくに原材料の上昇が重要。
・スタグフレーション…不況であるのにインフレが起こっている。この現象はディマンドプルインフレよりコストアップインフレにより適切に説明できる。
4.予想されないインフレのコスト
・インフレの影響をインフレが予想される場合と予想されない場合に分けて考える。
→予想されないほうがコストは高い。
・利子率…預金する場合、名目利子率は決定されているので、予想されないインフレが起こる場合、名目利子率により調整できず、利子率が実質的に目減りする。
→預金者の所得が減り、借り手の所得が増加する。
・賃金…名目賃金は同じでも、インフレが起こると労働者の実質賃金は減り所得ロスを被るし、企業はその分所得が増える。
cf.賃金の物価スライド制…予想されないインフレに対応して給料を変化。
・予想されないインフレは経済に不確実性を与え、経済の効率性に悪影響を与える。
5・予想されたインフレのコスト
・予想されたインフレは、予想されない場合によりもコストを失わずにすむ。人々はそれに対応して行動をとることができる。
・靴のコスト…インフレを予測していたとしてもかかるコストがある。インフレに備え、銀行にお金を預け、利子率を得ようとするが、その分の手間がかかるようになり、それがコストとなる。
・メニューコスト…インフレが起こると商品の価格表を作りかえる必要がある。予想されてもかかるコストである。
6.ハイパー・インフレーション
・インフレ率が極めて高い状況、これをハイパーインフレーションという。
→共通の原因として政府のハイパワードマネーの増発が行われたことがあげられる。
・ハイパーインフレが起こると、貨幣の保有者が損をして、政府がその分得をする。これをインフレ税という。途上国など政府が十分な税を得られない国家で行われる。
→ハイパーインフレを行うと政府の信用が損なわれる。
7.デフレーション
・超過供給時に発生。需要不足であることから不況であることが多い。
・予想されたデフレ。メニューコストはかかるが。靴のコストはむしろ減少する。
・予期しないデフレ。デフレ時には借り手ではなく貸し手に所得がシフトする
・デフレスパイラル…景気低迷→デフレ→景気低迷→デフレ・・・と繰り返される状況
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