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マクロ経済学入門 第8章 財政赤字と国債 [マクロ経済学を学ぼう]

数式も出てこないのでゆっくりできます。

第8章 財政赤字と国債
1.財政政策再考
・財政政策…ケインズ理論では乗数効果によって一国の総需要を増加させる。特に増税を行わず、国債を発行する場合にその効果は大きい。
・社会資本の生産力効果…政府支出の増加、公共事業により建設された資本ストック(社会資本、道路.橋など)は乗数効果に加えて、一国の総供給能力をあげるというプラスの効果も期待できる。
・政府支出の拡大はプラスの効果だけではなく何らかのコストを伴う。国債は国の借金を増加させ、それは財政赤字となる。
・国債には、社会資本の蓄積となる支出である建設国債と、社会資本として残らない経費に当てるための赤字国債がある。日本の財政法は赤字国債を原則として禁止している。
  …現在日本では毎年赤字国債が発行されているが特例として毎年発行されるものであり特例国債とも言われている。
・日本の財政赤字…90年代から急激に悪化。

2.国債の発行の問題点
・国債は租税による収入が政府支出を下回ったときに発生。現在の収入に制約されることなく必要な支出を行えるのがメリット。裁量的な財政政策を訴えるケインズ理論にとって重要。
(問題1)国債の負担:国債は将来的に償還する際に税金を徴収する必要がある。→現在増税されるか将来的に増税されるかの差しかない。国債負担を将来世代に転嫁している。
 建設国債の場合、社会資本は将来の世代まで残るから便益を受けることができる。が、赤字国債は便益すら受けれない。
(問題2)国債は利子を生む資産運用であることから民間の貯蓄が国債に回されることになる。しかし、貯蓄は民間投資の資金でもあるから、国債発行により利子率が上昇すれば、クラウディングアウトが発生し、民間投資が減少する。
 →将来の生産力の低下を意味する
(問題3)所得分配上の問題。国債は一部の人が持っているが、その負担は国民が均等に負担する。

3.日本の財政赤字。なぜ借金は増大したのか?
・1964年までは均衡予算の原則が守られる
・1965年に赤字国債、翌年から1970半ばまで建設国債を発行。但しその伸びは緩やか。
・1975年にオイルショックの影響からの不況により赤字国債、以降累積
・1980以降、財政再建路線。90年には赤字国債発行をゼロに。
・1992以降バブル崩壊から公共事業拡大のための建設国債発行増加。
・1994年赤字国債再発行。97年に財政構造改革を目指すも挫折。
・以降拡張的財政政策
・2001以降の小泉改革後も税収減、社会保障費増加に伴い赤字国債増加
  ⇒不況による税収落ち込みに加え、支出の硬直化の存在。さらには公共投資増による景気拡大効果が期待されたことが原因。しかし、日本の潜在的な成長率低下のため、政府支出増も期待したほどの効果を挙げなかった。

4.国債の中立命題(リカードの等価定理)
・ケインズ経済学と異なり、国債発行は経済になんらの影響も与えないという考え。
 →国債発行は将来の増税につながる。
 →家計が将来を見越す限り、一時的に現在が行われたとしても将来的な増税を見越す
 →減税によって一時的に可処分所得が増加しても、合理的な消費者は生涯所得は変化しないと考えるのであり、将来にかけての消費の計画を変化させず、有効需要も増加しない。
・同様のことは国債発行による政府支出の増加にも当てはまる。
「国債発行と増税のマクロ経済に及ぼす影響は同じ」

・国債の償還は長期にわたることから、自らが将来の増税の負担をしなくてもよいこともありえる、そしてその結果負担を免れた世代の消費は増加するのではないかという反論。
 ⇔バロー:人は子や孫の世代まで考えて行動するという利他主義の存在を主張。
・実証研究においては中立命題に対しては否定的な見解が多い
 ①人は利他主義のみによって遺産を残すわけではない
 ②家計の流動性制約、減税されたら可処分所得を増加させることができる
 ③課税は定額税(一括固定額税)だけでなされるわけではない。

5.課税平準化理論
・定額税以外の税制…資源配分の非効率化を生み出す。社会的コスト増加
・バローの課税標準化理論…社会的コストを最小化するために、毎年の社会的コストを平準化するような国債発行を行うほうがよい。
・将来の政府支出の経路に基づいて課税額を標準化することが必要な場合、政府支出が税収より多ければ国債発行により税収不足分を調達するのがよい。


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