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財政再建① 公共事業とケインズ理論 [財政再建]

最近世間をにぎわす単語、「財政再建」。では一体何が問題で、何をしなくてはならないのでしょうか?

ということを、以下、何回かに分けて経済学の問題として検討を加えていきたいと思います。

一回目はまず財政再建問題において、よく槍玉に挙げられることの多い公共事業を取り上げてみたいと思います。

まず、経済学的に見た場合、公共事業とはどういうものなのでしょうか?マクロ経済政策の基本的枠組みであるケインズ経済学から説明をしてみたいと思います。

ケインズ経済学の立場からはマクロ全体の需要と供給を調整するのは価格でなく、数量である、ということになります。

財市場における総需要Aは、消費Cと投資Iと政府支出Gに合計で得られることになります。

 ① A = C + I + G

これらのうち、消費Cは国民所得Yに増加関係にある(マクロ経済学入門2章参照)。

 C = C(Y) = cY

モデルの単純化のために投資Iはある水準で外生的に一定であり、変化無きものとする。また、政府支出Gは政策的に決定される。そうすると、総需要AはCに左右される、ひいてはYの増加関数となります。

所得が一単位増加すると消費が何単位増加するを限界消費性向といい、その値 c は、0<c<1となる。したがって、所得が増加するほどには消費は増加しない。

そして、ケインズ理論では総需要の分だけ生産が行われるので、A=Yが成立する。

公共事業

では、公共事業が行われるとGDPはどう変化するのか?を考えてみたいと思います。公共事業は①の式に照らすと、G政府支出に該当します。

たとえば政府支出Gを1兆円増加させると、Gが1兆円増加します。これでまずGDPが1兆円増加します。

さらに1兆円分所得(例えば、公共事業を受けた建設業界の所得)が増加します。先ほども述べたとおり、所得が1兆円増加すると、限界消費性向cの分だけ消費が増加します。

誘発された消費cの増加は、財市場では需要の更なる増加となります。結果、所得がc増加します。

そして、追加的に増加された所得c兆円に対して、再び限界消費性向cを掛け合わせたc(2乗)の大きさだけさらに消費が増加します。

こうして消費の拡大が所得を増加させ、さらに消費を拡大していく累積的な総需要拡大の合計を乗数効果といいます。

この等比数列の和を求めると、

 1/(1-c) 、となります。すなわち外生的に政府支出が1単位増加するとGDPは1/(1-c)分増加します。cを限界消費性向というのと反対に(1-c)を限界貯蓄性向といいます。さきのことは、限界貯蓄性向の逆数値だけ増加する、ともいえます。0<c<1より、政府支出1の増加に対してGDPは1より大きく上昇することになります。

減税

では、減税の効果は公共事業と比べてどうか?

1兆円減税すると、その分可処分所得が1兆円増えます。すると、限界消費性向cの分だけ、c兆円消費が増えます。

これはすなわちc兆円政府支出が行われたのと同じ効果があります。すると当然1兆円の政府支出のときより、効果はc/1になるので、減税乗数は

c/(1-c) 、となります。つまり、同じ1兆円なのに、効果は政府支出を増加させるほうが高くなります(c<1より)。

予算制約

なお、これまでの考察は財源の問題は考えてこなかった。すなわち、政府支出の増加、減税の補填は公債発行でまかなっていた。

均衡予算の制約のもとでは政府支出する分、その分増税することになる。

先にやったとおり、政府支出の乗数効果は、限界貯蓄性向の逆数、1/(1-c)でした。一方、増税の効果は現在のちょうど逆なので、-c/(1-c)、となる。したがって、

1/(1-c) - c/(1-c) = 1

言い換えると、均衡予算の制約では政府支出を増加させる乗数は消費性向と独立に 1 、となる。均衡予算乗数。

 

このようにみると、公共事業は効果が高い、ということのように見えます。現在するよりも高い効果もありますし、その分増税しても効果があります。

よく、「無駄な公共事業はよくない」という主張を聞きますが、上の式には効率性という要素は出てこないのです。つまり無駄だろうと、無駄でなかろうと、公共事業には上で見たような効果があります。行ってしまえば、「穴を掘って、穴を埋める」ということでもよいように思われます。

では、公共事業は今問題になっているのでしょう?

次回へ続く。


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