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マクロ経済学入門 第4章 [マクロ経済学を学ぼう]

進めば進むほど前のことを忘れてしまう今日この頃。せめて鳥よりは記憶力が良くありたいと思ふ。

第4章 金融と株価

1.企業の資金調達手段
・マクロ経済全体で見た場合、企業の投資量は家計の貯蓄量と利子率による調整を経ながらバランスしている。
・実際、家計の貯蓄から企業へ、銀行借入・社債の発行、株式発行、という形態を通じて資金が流れている。
・銀行借入は従来の日本企業の基本的な資金調達手段である。この場合、預金者である家計は銀行が資金をどこに調達するのか不明である。銀行のような金融機関を金融仲介機関といい、こうした資金の流れを間接金融という。一方、社債は家計が企業にたいして直接資金を供給することから、この資金の流れを直接金融という。株式は社債と異なり企業の所有権を購入することになる。利子を支払う必要はないが、利潤の一部を配当として支払わねばならない。

2.家計の資産選択
・上記のように家計の資産運用手段はいくつかあることから、資産選択をする必要がある。そこで、考慮されるのは収益性、安全性、である。一般に安全資産(預金等)は収益性が低く、危険資産(株式等)は収益性が高い、という傾向がある。
・そこで、安全資産の利子率をr、危険資産の平均的な収益をRとすると、rとRには、
 R =r +  という関係が存在する。
 →危険資産の平均的な収益率は収益率の不確実を反映し、リスクプレミアムpをだけ、安全資産の利子率よりも高い水準に決定される。

3.株価の決定理論
・今、t期における1株あたりの株価をpt、またt期末に支払われる1株あたりの配当をdtとする。t期からt+1期にかけて株式を保有することによる収益は、キャピタルゲインといわれる株価の値上がり値(pt-1 -pt)と配当の受けり額(dt)の合計となる。

 R = (pt+1 - pt)/(pt) + (dt)/(pt) = r + 

の関係が存在する。
・上式から株価の理論値を計算する。その簡単な式として、企業の配当や株価が時間を通じて変化しないと仮定する。すると、
 pt = d/(r + 
 →株価ptがdに比例すること、rやに反比例する
・一方、上の式をより一般化すると、
 pt = (dt + pt+1)/(1 + r + ) 
 →株価がd、r、以外にも、次回の株価pt+1にも依存している。
 →ここで、tをt+1に、t+1をt+2に置き換える作業を繰り返すと(省略)、株価が現在から将来にかけての配当の割引現存価値として表示でき、現在から将来の配当の加重平均として決定される。加重平均のウェイトは現時の配当が最大であり、遠い将来につれて、そのウェイトが小さくなる。

・現実の株価を見ると、現実の株価の変動は当時の配当だけで説明するにはあまりに大きく、株価の理論値と合致しない。この理由としては、キャピタルゲインのみを目的とした投機の存在があげられる。
・一般に、株価等の資産価格が理論値から乖離して上昇する現象はバブルと言われる。このとき、株価を上げているのは人々の将来の値上がりへの期待のみであり、一度その期待が失われると、逆に株を買おうとする人がいなくなってしまう。80s末の日本の株価はまさにこうした状況にあった。

4.トービンのq理論
・3.によると配当が大きければ株価は上昇する。配当が大きい企業は優良企業である。すると、株価は現在から将来にかけての収益を株式市場が評価した値ということになる。市場の評価が正しい限り、株価の高い企業は設備投資を増加させて生産を拡大すべきだし、そうでない場合は、設備投資を減らし企業の規模を減らさねばならない。
・トービンは以上のことに注目し、

q = 株式で評価された企業の価値 + 負債総額
         資本の再取得価格
 と定義した。
・株式で評価された企業の価値とは、具体的には企業が発行した株価の総額によって評価される。市場での企業評価が正しいとすれば、企業保有の資本ストックを使用し続けた場合今後のどれだけ利益を生むかを表す。一方、分母の資本の再取得価格とは企業の現在保有する資本ストックの全てをそのときの資本財の価格で評価したものである。
・仮に分母が大きくなる場合、そのとき企業が有する資本ストックを使用するより、売却したほうが利益が大きい。トービンのqが1より小さくなった場合、資本ストックを減少させるマイナスの投資を行うべきということになる。そして、逆にトービンのqが1を超える場合、企業は投資を行うべきということになる

5.投資理論の実証分析
・投資理論において最もしっかりとした理論的基礎を有しているのはトービンのqや調整費用モデルである。しかし、現実的なパフォーマンスはより理論的な基礎の弱いジョンゲルソン型の投資理論や、加速度理論のが高い。
・トービンのqの理論モデルが現実に合うようにするには、さまざまな修正を施す必要がある。大きな問題として、市場で評価された企業価値としての株価には設備投資の結果としてのストックのほかに、企業が保有する土地などの他の資産の評価も含まれていることである。これらの評価を鳥の区必要がある。また、国家の税制も考慮する必要がある。
・以上のようにトービンのqはさまざまな調整がひつよなため、結果、研究ごとにさまざまな結果が出てしまう。

6.流動性制約と投資
・これまでの投資理論の説明では、企業の投資の水準は過去の利潤よりも現在から将来にかけての利潤に依存する、と考えるものであった。しかし、現実には投資は企業が現在保有する自己資金の量に依存する自己資金の量に大きく依存する。
・その最大の理由は企業がいつでも自由にお金を借りれるわけではないということにある。将来利益が見込むことのできる企業でも、現在の資産が少ないと十分な借入を行うことは難しい。即ち、家計の消費関数と同様、企業にも流動性制約があることになる。
・この観点からの研究によると、配当が少ない企業ほど流動性制約に直面することが明らかにされている。配当の少ない企業とは急速に収益を伸ばす新興企業が多く、配当が多い企業は以前から業績を上げていた成熟企業が多い傾向がある。新興企業は将来大きい収益を見込むことができるが、多くの場合それは不確実であり、従って、十分に資金を借りることができないのである。

・日本のメインバンク制は企業の流動性制約を最小限にする制度であるとされてきた。日本では、最も貸し出しが多い銀行が企業に継続的に貸出を行い、企業と統合的な取引関係を結んでいることが多い。この場合、企業のモラルハザードが解消されるという利点がある。しかし、近年、メインバンク制のマイナス面として、他の銀行との取引がむつかしくなるなどの弊害も存在する、ことが指摘されている。


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